三省会


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宇佐先生の講話(平成30年1月14日)

 広く世間に森田療法を理解してもらうために、あるいは学問的に明確に規定するために、かつて森田先生がいろいろ説明をされました。それは理論としてはもちろん必要なことでしたが、治療の実際から申しますと、その概念的に決めた事柄はことごとく治療の障害になります。

 そのため、前の院長、宇佐玄雄の講話と日頃の指導は、森田理論、学説を説明して理解してもらおうとするものではありませんでした。むしろまったく理屈抜きに、すぐその場に必要な事柄をとりあえず、いやいや手を出してやりなさい、ということに尽きるものでありました。ですから、他の森田療法の施設で行われていた森田療法との非常にはっきりした違いは、方法や理論的な説明というものが一切ないところであると、今では申し上げることができます。

 そうしますと、宙ぶらりんで頼りなく、元になる根拠がないというふうに思われるでしょうが、組み立てがない、あるいは理論的構成が前もってないという状態が究極のあるがままそのものでありますから、かえって治りが早いのです。

 私がまだ若い頃は、長年悩み苦しんだ神経症はやはりそれなりに時間、年月がかかるだろうと考えておりました。ところがそれは大きな間違いで、前の院長によりますと、まさに治るのは迅速かつ根治的だというのです。その頃の私にはとてもおかしな説明に思えました。ところが、その後、これはもう間違いなくその通りであって、これほど早く見事にきれいに治る治療法はないことを確信しました。

 「これが自分だ」というものはすべて本物ではなく、「これが自分だ」というところからすでに脱線なのです。考えた自分、考えた心、生きるということなど、それを最初から論じると、そこで止まってしまって、決して治ることがない、あるいは悟ることがない、という目のつけ所が前の院長の見方であったわけです。したがって説明を上手にすればするほど脱線してしまう、長くかかる、ということです。迅速根治というのは何かと申しますと、そのいきなりの、ぶっつけの、やにわにこうであるという状況をおいて他にありません。

 精神全体の見方からすれば、人間の知性というものは本来心の外側の仕組みであって、「知性は精神の外部機構」という表現も心理学の教科書にもしっかり記載されており、心の問題をとやかく言うのは脱線です。

 心のことを言う前に、あるいは「これが自分だ」という前にいきなり実際の生活をするということです。森田先生もパッと石を投げてくる人がいたら、サッとそれを上手に避けるというようなことを例として挙げておっしゃっていましたが、自分というものをどう対処するか、と考えるより先に全治の状態がその場で現れているのです。ですから、森田先生が、外へ向けて君はもっとハラハラしたまえ、とよくおっしゃったと聞きますが、それでもう満点なのです。落ち着こうとか、ゆったり構えようとか、気にしないでおこうとか、世間の人が考える心の落ち着いた状態というのは間違いなのです。とにかく外界のこと、外のことに対して敏感に次はどう対応するか、ということを野生動物のように常に構えているという、そこのところでもうすでに全治であるわけです。

 先ほど会場から、症状のことを忘れてしまったというお話が出ましたが、忘れようにも忘れられない、あるいは忘れたくても忘れられないという症状、悩み、自分のことなどは、一種のこだわりで、その事柄に止まってしまっているわけです。忘れてしまえればそれでいいですけれど、そのこだわった状態をどうするか、私が前の院長に質問したところ、こだわったまま行くと申しておりました。

 忘れられない問題を抱えながら悩みながらそのまま行くという、そこのところに、あるがままの意識を持ち込まないという素晴らしさがあるのです。あるがままは言葉にする前の状態ですから、嫌だなあ、何とかしたいなあ、という感情が出て来ても、その段階ですぐ外へ向かっての緊張を高めた行動があるばかりなのです。心に向かって、これを森田療法でどう治したらいいのかというような工夫は一切要りません。かえって脱線します。ですから、こだわったまますぐ次のことをするという瞬間的な生活ぶりが見事な全治であります。

 すべての答えが間違い、あるいはそれでない、あれでもない、これでもない、こうかと言うとそれでもない、とこうなって来ますから、どうしたらいいかとお考えになる必要がもうまったくないわけです。方法を考えたらすべてだめで、あれでもない、これでもないと言っているその事柄からも離れているのです。禅ではこういうもろもろの事柄を否定することを百の否定、百非と申します。例えば坐禅でしたら、その場で坐るというのが仕事ですから、いろいろ気になりながら、ハラハラしながら坐っているということになるのです。



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