三省会


目次

宇佐先生の講話
(平成29年5月14日)

 今日は大変高級なお話をBさんのご体験からお伺いすることができました。あるがままという森田療法の究極のものは思想ではありません。何らかの経験に基づいた考えでもありません。まさにこの通り、という言葉のない世界における事実そのものです。これが森田先生が一番はっきり治療の本質として示されたものです。

 これで良いのだという肯定とか、これではまだいけないという否定とか、皆さんのお考えに対する批評というものは何もありません。即刻、私どもが今直面している現実世界での皆さん方のやり繰りをおいて他にはありません。それを心の問題として取り上げますと、むしろ脱線で、例えば皆さん方が今日この三省会においでいただいてお話を聞いていらっしゃる、この瞬間、瞬間がどなたにおかれましてもまぎれもない全治でいらっしゃるのです。

 三聖病院が閉院になる時に、京都新聞がそれを取り上げて記事にしてくれました。そこに京都大学の新宮一成教授が談話として、精神療法が宗教と関係があることを示す病院であった、という評価を書いておられました。まさにその通りでありまして、三聖病院の森田療法は宗教も踏まえておりまして、それがなかったなら早速の全治ということはあり得ないわけです。自分についての考え、それをこだわりと言ってよろしいのですが、その中に悩みというものをくみ上げ、組み立てられるわけですが、何か理由がある、あるいは根拠があるというあるがままではなく、いきなりのぶっつけのあるがままが究極の状態であるわけです。ですから、ご自分でこの病気をどうしたらいいかと考えていらっしゃった方々にとりましては拍子抜けしてしまうような感じでしょうが、そういう、今まで宗教として考えられてきたものも十分、この森田療法の中に含まれているわけです。

 では、会場からのご質問にお答えします。

 質問:最近集中して仕事をうまくこなすことができません。上司から休職を勧められましたが、どうすればよいでしょうか。

 お答:ご自分の調子の悪さを中から何とかしようという、自分対自分の努力をさっそくおやめになることです。とりあえず仕方なしにやるべき仕事をやって行くこと、そしてそのやり方の工夫に全力を傾けて行くということです。前院長も、仕方なしに行きなさい、と何とも情けないようなことを申しましたが、これは非常に的確な指導なのです。前院長はまた、全治というものを段階的に考える必要はない、落ちているごみをちょっと拾うこと自体が全治そのもの、と申しておりました。そして精神作業のことをやかましく言っておりました。精神作業とは何かと言いますと、たとえば私がここでこうしてお茶をいただいて感謝をいたしますが、皆さん方も周りを見回して片っ端から感謝することで全治なのです。精神作業で外向きに頭を使っていらっしゃるのはすべてその場で全治でありまして、皆さん方は治らずにはいられないのです。ですから、ご質問の方は仕方なしにやるべき仕事を工夫しながらお勤めになるということで治っているということですから、どうぞそのままお続けください。

 質問:将来のことが不安でたまりません。たとえばもし自分に子供ができたら、その子が神経症になるのではないかという不安があります。

 お答:いろいろああでもない、こうでもないと不安だらけというのは、本当の森田療法では良し悪しがないのです。いつもその時の心でもう充分、ということなのです。子供が神経症になるのではないかという不安があって、そういうことはその時になってみなくては分かりません、という答えを出してはいけません。 前院長は本当の怖がりでいなさい、と申しておりました。不安のままでいなさいということです。同じような苦しみを子供には味あわせたくないというお気持ちを持っておられるのは、親の立場としてはごもっともなことですが、自分あるいは自分の子供に関する内側の問題につきまして、楽観視するべきかあるいは悲観的にとらえるべきかというような、論理的な解釈は一切加えないことです。
 内面の事柄に対して言葉を使わないことです。内側の世界は心理学的に言えば感覚と感情の湧き出るままです。つまり、人間が最も人間らしい、考えを組み立てるという能力は常に外側の事柄が相手で、内側は感覚と感情だけの世界にしておくということです。そこにあるがままの素晴らしさが開けているわけです。大自然というのは一般的には外のことについて使われますが、内側の内発的、自発的に出てくるものもまさに大自然の現われで、禅の大家である鈴木大拙先生の晩年の言葉を使えば「宇宙的無意識」です。
 私は前院長から心の持ち方とか、良い心のあり方とか、心理学的にこれが良いというようなことは一切教えてもらっておりません。つまり心には用事がなかったのです。



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