三省会

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第440回三省会例会
宇佐晋一先生の講話
令和元年9月8日

 本日は大変結構なお話をたくさん聞かせていただき感謝いたします。では会場からのご質問にお答えします。

 最初は「宇佐先生は無神論者でしょうか、それとも有神論者でしょうか」というご質問です。

 宗教というのは自己意識に関わるものですが、世の中には絶対必要なものです。他者意識の方は、皆さん方はそれぞれお仕事や勉強すべきことをお持ちで、それに手をつけること自体ですでに救われています。
 心の問題や自分についてのことをいろいろ自分で組み立てて主張なさることがわざわいの元となります。したがって神様がいらっしゃるのかいらっしゃらないかを決めることはまったく無意味で、心とか自分をどのようにも決めないことです。それが本当の宗教です。今のまま、びっくりしたらびっくりしたままが本当の宗教です。ですから、どんどん皆さん方のお仕事、勉強をやり、あらゆる人に対する働きかけをして喜んでもらわれたらよろしいのです。役立つ事を一生懸命なさることです。
 森田療法が心の問題を解決する療法だととらえると、たいへん難しいということになりますが、少しも難しくありません。皆さん方の今のままそのままで、どんな良いと思われる答えを出されようとも答えはそれではないのです。答えは出さないことです。どんどん実際のお仕事、勉強、人を喜ばせることを熱心になされば良いのです。

 次は「仏教の言葉に一瞬にして悟る頓悟とんごとだんだんに悟る漸悟ぜんごがありますが、森田先生は、森田療法は漸悟の方が多いと書かれています。これについて宇佐先生はどう思われますか」というご質問です。

 本来、漸悟というものはあり得ないのです。あるのは頓悟だけです。頓悟しては少し後戻りする、また頓悟しては少し後戻りするということを繰り返していく姿が漸悟、つまりだんだんに治るものだと思いこんで苦心していらっしゃる方は皆思い違いをされているのです。実は常にインスタントなのです。インスタントであることが本当の治った状態です。言い換えますと、本当に治った状態というのは必ずインスタントなのです。

 次は「最近の会社ではストレスでうつになって退職しないよう、メンタルヘルスの面で気をつけなければならないという風潮がありますが、これについて先生のお考えはどうでしょうか」というご質問です。

 メンタルヘルスと一口に言いましても簡単ではありません。まず、客観的障害、つまり精神科の病気と森田神経質というまったく主観的な障害との見分けをつける必要があります。主観的障害というのは虚構きょこうの病気ですから、病気のように思えるにもかかわらず実際には病気ではないのです。治そうとするとますます苦しくなり、場合によってはアトピー症状も悪化することがあります。
 ですから森田神経質の方のメンタルヘルスとしては、ご自分の症状や心のことについては一切何も言わないこと、決めないことです。そして実際の生活の方にすぐ取り組んで、あれこれ目的を持ち責任を重くお持ちになってどんどんやって行くということです。森田先生流に言いますと、仕事を欲張って、熱心に取り組んでそこから離れないようになさればいいわけで、責任の重い方を取って行くということです。大事なことを片っ端からやって行くのです。
 幸い皆さん方は、同時に二つのことを意識することができません。ですから、自分のことから離れよう、自分のことは問題にしないようにしようと考えるのではなく、実生活のことを一生懸命にやっていれば自己意識の方はどうということもなくなってしまうのです。
 古来、仏教のいろいろな宗派では阿弥陀あみださんの世界をいっぱい飾り立て、極楽という世界を描いていますが、禅の方から見ると浄土じょうどは何もないのです。かつて、禅の大家、鈴木大拙先生は「浄土は空っぽですよ」とおっしゃったそうです。このことはまさに森田療法でも言えることで、心の中のことは普通の論理をもって解決することはできない、と森田先生が初めからびしっとおっしゃっています。ただ多くの後継者がそのことに気づかず、だんだん治るものだと思っているのです。禅では漸悟ぜんごということはあり得ず、すべてその場その場での瞬間の頓悟とんごあるのみということをあらためて申し上げておきます。
 これが答えだというものをつかもうとしてはいけません。本物の森田療法というのは言葉にするわけにはいきませんので、学会のように森田理論、学説について研究し合っているところからは決して出てきません。「あるがままとは」と論じると少しもあるがままではなく、説明に終わってしまいます。
 本当は皆さん方ご自身がすべて森田療法の全治者でいらっしゃって、どんどんこれからの生活に進んでいらっしゃるというそれだけで良いのです。ですから、自分を考えに置き換えないメンタルヘルスという本物の森田療法を会社にも取り入れてくださればよろしいと思います。

(第440回 三省会例会における宇佐晋一先生の講話 会場:メルパルク京都)



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