三省会

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宇佐晋一先生 講話


森田療法全治の論理とは  

 神経症性障害のみならず心の問題は森田療法によって跡形なく治る。この優れた全治の特色は、一般の精神療法とは論理がことなるからであって、森田療法でも うっかり普通の論理を持ちこんでいると、治るのに長い時間がかかってしまう。しかし森田先生はそういうことをおっしゃっていただろうか、と心配される方もいらっしゃるだろう。それは ちゃんと「感情ニハ普通論理ニ従ワヌモノアリ」と述べておられる。だから「治らない」といっている人はそれを見逃がしているだけのことなのである。普通に病気を治すというあの論理でがんばっているから、いつまでたっても治らないわけなのだ。早く "治す論理" から離れることをおすすめしたい。

 この話は種あかしのようだが、けっしてそうではない。種あかしなら分かってすむ話だが、森田療法のほうは分かってすむ話ではなくて、心は別種の論理のなかに放置して、他方 外に向っては大いに活躍する道が開かれるのだ。どうしたら世の中の人に役立つ仕事が見つかるか。他人に喜ばれる仕事はもっとないか。探してばかりいるような生活が始まるのである。そういう社会的によいことを探して、どんどんやっていく時、もう神経症性障害は存在せず、治ったかどうかなど考えるひまもないのである。こういう外に向かって緊張して次々仕事を見つける前進の姿を、森田先生はすすめられ、治し方について質問する人に「君はもっとハラハラしたまえ」といわれるのが口癖のようだったと伝わっている。

 いまは全世界を通じて、新型コロナウイルス感染症の拡大に対してハラハラして暮らしているから満点なのである。のんきに社会生活を送って、守るべき対策をおろそかにしていてはいけないご時勢である。こうして皆さんが不安の真只中にいるよりほかない状況は森田療法からすれば実に貴重な体験といわなければならない。すぐさま「今しなければならないことはなにか」と探すならば、それはもう立派な全治の姿といってよいのである。

   2021.1.22



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